もうすぐ素敵なクリスマスがやって来る。
部屋の中をかわいらしく飾り付けよう。
まずは、おおきなツリーを部屋のまん中にそしてリースを玄関に飾るのです。
切り絵で天使を作りましょう。そして窓には、雪のスプレーを
雪といっしょに天使がボクの窓に降りてきてくれますようにと…。
でも、彼の部屋はうす暗くっておまけに友達のスパイダー達がそこら中に家をかまえているので
とうていツリーを飾ることは、出来ないのです。
だってそんなことしたら、スパイダー達の家は壊れてしまうから…。
せめて、天使の紙飾りを作ろうと紙をハサミで切ってみるけれど
なぜか出来るのは、コウモリの群れ。
なんにも知らない天井のコウモリくん達は、自分たちをモデルにしてくれたのだと
大喜びなので、彼もこれでヨカッタ。と思うのでした。
どうやら彼のカラダは、ハロウィンで出来ているようです。
クリスマスとは、縁がないようでクリスマスの挨拶も「メリー・クリスマス」と言えなくて
すぐ「trick or treat」と言ってしまうのでした。
おかげで近所でもそうとうの変わりモノになっているのでした。
ある日彼は、めずらしく買い物に出かけました。
街中はクリスマスムードで、きれいなイルミネーションに透き通る様な歌声の賛美歌。
彼も誘われるように鼻歌を…。が、突然心ないヒトに雪玉を投げられてしまいました。
「へたくそー!!やめろー!!!」と罵声を浴びせられ彼は、悲しくなりました。
彼の声は、お世辞でも奇麗な声とは言えませんでした。例えるなら…。稲妻のよう。
こんなコトがあるから、彼は街に出るのがあまりスキじゃ有りませんでした。
とっとと、買い物を済ませて家に帰ろうと最後のお店に向かう途中。
大きな木の枝からゆらゆらぶら下がっているみの虫くんに出会いました。
「trick or treat」彼が、みの虫くんに挨拶をしようとした時
男の子が全速力でこちらに向かって走ってくるのでした。
このままでは、みの虫くんが危ない!!
と、思った瞬間。彼は、男の子を突き飛ばしていました。
みの虫くんは、無事でした。
でも、男の子は転んでしまいました。彼は、男の子を起こしてやろうと
手を差し伸べましたが…。時はすでに遅かったようです。
周りを歩いていたヒト達が、すでに男の子を起こしていて
泣きじゃくる男の子がかわいそうだと、彼に避難の目を向けているのでした。
周りの誰かが言いました。
「こいつは、わざと男の子を突き飛ばしたぞ!なんて、酷いヤツだ!!!」
「私も見たわ。なんて恐ろしい!!」
彼は、いたたまれなくなってその場を走り去ろうとしました。
だけど、大きな男につかまって顔中ボコボコにされました。
その間、周りのヒト達は誰一人彼を助けようとしませんでした。
「わかったな!こんなことをしたらこう言う目に合うんだ!!
ワルイと思うんなら、あの男の子に謝りな!!!」
凄い勢いで、大きな男に言われました。
でも、彼はひとこと。「trick or treat」
逆上した男は、彼をいっそう激しく痛めつけました。
誰も知らないのです。
彼のカラダは、ハロウィンで出来ているということを…。
おしまい。